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日外会誌. 116(4): 260-264, 2015


会員のための企画

日本における臨床試験をめぐる諸問題―原点に立ちもどって―

現在の日本の臨床試験が抱える問題点

国立がん研究センター 企画戦略局長
国立がん研究センター 中央病院副院長
国立がん研究センター 中央病院乳腺・腫瘍内科

藤原 康弘

I.内容要旨
近年,臨床研究の信頼性を揺るがす事案が頻発している.これらに共通するのは,臨床研究に関する倫理指針(2015年4月1日からは「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」となった)やヘルシンキ宣言に規定され,われわれ臨床医が常識として身につけておかねばならない研究倫理への違反が大半を占めていたことである.その事実を踏まえつつ,再生医療,ロボット手術などの未来型医療が急速に流れ込んでいる外科診療の革新や進歩には,臨床研究,特に臨床試験の実施が必須であることを考えながら,現在の日本の臨床試験が抱える①外科における診療と臨床研究の境界の問題,②利益相反管理やオーサーシップ,臨床試験結果の公表の問題,③保険診療下での臨床試験の実施(療養担当規則)に係る問題,そして④先進医療・医師主導治験に関わる問題について,論点の洗い出しと解決への道スジを示した.
治験以外の臨床試験についても法律の下で,その実施を規制する動きが急である現在だからこそ,産・官・学,更には患者や国民が協力して,これらの問題を解決し,信頼性の高い,そして成果は日常診療の進歩や改善につながる臨床試験が多数実施できる制度・体制づくりを,われわれ医師が旗振り役となって実現していかなければならない.

キーワード
倫理指針, 臨床研究, 先進医療, 臨床試験

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