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日外会誌. 116(1): 50-54, 2015


特集

食道胃接合部癌の治療―今後の展望―

7.食道胃接合部癌に対する補助療法―内外の臨床試験と今後の展望―

大阪大学 消化器外科

黒川 幸典 , 瀧口 修司 , 宮崎 安弘 , 高橋 剛 , 山崎 誠 , 宮田 博志 , 中島 清一 , 森 正樹 , 土岐 祐一郎

I.内容要旨
食道胃接合部癌は,胃癌や食道癌全体と比べると非常に稀な疾患と言えるため,この疾患のみを対象として臨床試験を実施し,補助療法のエビデンスを構築するのは困難である.胃癌に比べて食道癌が比較的多い欧米では,食道癌と食道胃接合部癌を対象に,カルボプラチンとパクリタキセルを用いた術前化学放射線療法を評価する第III相試験(CROSS試験)が実施され,その有用性が証明された.したがって,欧米における食道胃接合部癌に対する標準的補助療法は,カルボプラチンとパクリタキセルを用いた術前化学放射線療法と考えられている.一方,東アジアでは,胃癌と食道癌いずれの手術においても手術術式特にリンパ節郭清の範囲が大きく欧米と異なるため,欧米のエビデンスをそのまま導入することはできない.東アジアで行われた胃癌に対する2つの大規模第III相試験(ACTS-GC試験,CLASSIC試験)の対象には,低い割合ながらも食道胃接合部の腺癌症例が含まれていると考えられるため,これら2つの試験結果に準じて,食道胃接合部の腺癌に対してはS-1単剤もしくはカペシタビン+オキサリプラチンによる術後補助化学療法が行われることが多い.近年,我が国においても食道胃接合部癌は顕著に増加しているため,今後はオールジャパン体制で食道胃接合部癌に対するより効果的な補助療法を開発していくことが期待される.

キーワード
食道胃接合部癌, EGJ, Siewert分類, 補助化学療法, 化学放射線療法


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