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日外会誌. 116(1): 40-44, 2015


特集

食道胃接合部癌の治療―今後の展望―

5.食道胃接合部癌に対する術式と至適郭清範囲

東京大学大学院 医学系研究科消化管外科学

山下 裕玄 , 瀬戸 泰之

I.内容要旨
食道胃接合部癌は,食道と胃の境界領域に位置するという解剖学的特殊性のために食道癌として扱うべきか胃癌として扱うべきか議論がある疾患である.我が国においては食道胃接合部の上下2cm以内に癌腫の中心があるものという西分類に基づき食道胃接合部癌を規定しているが,これは国外でも広く用いられているSiewert分類のtype IIとほぼ一致している.食道亜全摘,拡大胃全摘という大きく異なる術式を同一疾患に選択可能としており,いずれを用いるかは個々の症例に応じて医師の判断に委ねられている現状である.至適リンパ節郭清範囲については,No. 4sb,4d,5,6といった幽門側胃の壁在リンパ節への転移頻度が低く,これらの領域へ転移した場合の生存率が極めて低い事実からも局所コントロールの対象としては腫瘍学的に正当化されない.JCOG9502の結果から腫瘍口側端が接合部から3cm以下の場合には経裂孔的手術が我が国では標準的であるが,3cmを超えた場合における縦隔リンパ節の至適郭清範囲が未解決の課題として残っている.食道胃接合部癌は,特にリンパ節転移個数の多い症例は高頻度に再発死亡し予後不良であることが知られており,至適術式の検討と同時に,術前術後補助療法の開発,補助療法の介入が望ましい症例をいかに選択していくかも今後の重要検討課題であると言える.

キーワード
食道胃接合部癌, 西分類, Siewert分類, 縦隔郭清, 経裂孔アプローチ


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