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日外会誌. 115(6): 317-322, 2014


特集

わが国の小児外科五十年のあゆみ

4.胆道閉鎖症の手術と遠隔期の問題点

東北大学大学院 医学系研究科小児外科学分野

佐々木 英之 , 田中 拡 , 仁尾 正記

I.内容要旨
胆道閉鎖症(以下,本症)は1950年代に肝門部腸吻合術が発表されて以降,様々な術式や管理の改善により成績は向上している.肝門部腸吻合術のポイントは肝門部組織の至適切離ライン設定と切離面に露出した微小胆管を損傷しない吻合である.肝門部切離は閉塞した肝外胆管組織を残すことは避けられてきたが,切離が深くなりすぎると,切離面が肝組織に埋もれて術後に肉芽性閉塞を来すことで胆汁排泄を妨げる.近年では,肝臓に切り込まずに肝被膜を温存し,線維性瘢痕組織を切除する報告が多い.胆管炎防止付加術式も歴史的変遷があるが,最近では単純Roux-Y法と人工腸弁付加Roux-Y法の2つに集約されている.
本症の長期自己肝生存例の増加に伴い遠隔期の問題点が顕在化している.胆管炎は重要な続発症である.自験例の成人症例の胆管炎発症頻度は21.3%で,うち9.5%が最終的に移植に至っていた.肝予備能が保たれており,胆汁うっ滞を来す病変が限局性であれば外科的介入も選択肢の一つとなるが,常に肝移植の可能性を考慮する必要がある.門脈圧亢進症は静脈瘤形成,脾機能亢進症は対症的治療で対応可能であるが,続発性肺血流異常の発症に注意を要する.また妊娠出産に関連して胆管炎や門脈圧亢進症が増悪することがあり,注意を要する.今後もこれらの問題を解決し,本症の良好な自己肝生存を得るために,病因·病態の解明に向けた努力を続けていく必要がある.

キーワード
胆道閉鎖症, 葛西手術, 胆管炎防止術式, 晩期合併症


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