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日外会誌. 115(5): 266-269, 2014


特集

心臓・大血管外科手術におけるインフォームドコンセント

6.心房細動に対するメイズ手術

日本医科大学 心臓血管外科

石井 庸介

I.内容要旨
手術のインフォームドコンセントでは手術を行った際の利点とリスクについて詳細に説明することが重要である.心房細動に対するメイズ手術の利点とリスクについて述べる.メイズ手術の目的は(1)洞調律への復帰,(2)心房収縮による心房機能の回復,(3)血栓塞栓症の予防である.心房細動に対するメイズ手術の洞調律復帰率は70~90%程度である.メイズ手術後の心房収縮については,心房細動では消失していた心房収縮が術後に改善したとの報告がある.さらにメイズ手術によって脳梗塞など血栓塞栓症のリスクは減少する.一方,出血は心臓手術においてもっとも起こり得るリスクではあるが,近年の外科用アブレーションデバイスの開発により心房切開線をアブレーションラインに置き換えることで出血するリスクは減少している.術後の洞不全症候群も出現する可能性があり,ペースメーカ植え込み術が必要になることがある.メイズ手術後のペースメーカ植え込み術は5~10%程度と報告されている.次に,メイズ手術を行っても術直後1カ月以内に心房細動を一過性に起こす場合がある.メイズ手術直後に40%程度の症例において術後1カ月以内に心房細動が出現するとの報告がある.メイズ手術は単独で行うことは少なく,弁膜症などの器質的心疾患に対する手術とともに行うことが多い.しかしながら,メイズ手術を追加して行うことはリスクにはならない.

キーワード
メイズ手術, 心房細動, インフォームドコンセント


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