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日外会誌. 115(2): 76-83, 2014


特集

ステントグラフトの中·長期成績

5.胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の現状

東京慈恵会医科大学 外科学講座血管外科

馬場 健 , 金岡 祐司 , 大木 隆生

I.内容要旨
胸腹部大動脈瘤(TAAA)の手術成績は向上してきたとはいえ,未だ満足すべきものではない1) .臓器虚血,腎不全,肺出血,肺炎などの合併症をはじめ,特に広範囲TAAAの場合は対麻痺の発症が問題である.対麻痺は発症するとその予後は極めて不良2) であり,確実な予防法がないのが現状である.一般的にはステントグラフト(SG)治療の方が対麻痺のリスクは低く,また遅発性であり3) 4) ,SGを用いた治療はこの分野で最も期待される治療法である.しかしTAAAには腹部分枝が存在するため通常のSGでは対応ができない.TAAAに対するSG術は腹部分枝にバイパス(debranching)を先行し,SGを留置するハイブリッド手術あるいは穴あき(fenestrated)SGや枝付き(branched)SGを用いて,SG内部から腹部分枝との間をcovered stentで橋渡しする方法5) などが行われている.我々も当初はハイブリッド手術を行っていたがその手術成績は決して良好ではなく現在は主に枝付きSG術を行っている.TAAAに対する枝付きSG術は人工血管置換術(open repair:OS)不能と判断された患者における数少ない治療選択肢の1つであり,我々は手術不能と判断されたTAAA患者に対しcustom madeの枝付きSGを用いた血管内治療を施行し良好な成績を収めている.しかし一方でSG本体と分枝のステントとの接続部が多く,overlapも短いためエンドリーク(EL)の原因となりうる.術後遠隔期に追加治療が多い傾向にあり,今後はEL減少に寄与するデバイスや手技の更なる改良により治療成績改善が期待される.

キーワード
胸腹部大動脈瘤, 枝付きステントグラフト内挿術, t-Branch, 対麻痺, エンドリーク


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