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日外会誌. 114(4): 173-175, 2013


特集

進行肺癌に対する拡大手術―最近の動向―

2.肺癌に対する拡大手術の位置づけ

東京医科大学 外科1講座

池田 徳彦

I.内容要旨
肺癌で隣接臓器(大血管,胸壁,横隔膜,食道,気管分岐部など)に浸潤があり,これを合併切除することを拡大手術という.日本胸部外科学会の学術調査によれば,2010年に我が国では32,801件の肺癌手術が行われた.このうち隣接臓器合併切除を行ったのは1,080例であり,肺癌手術全体の3.3%に相当する(大動脈17例,上大静脈28例,腕頭静脈12例,心膜151例,肺動脈163例,左房42例,横隔膜124例,胸壁507例,椎体31例,食道5例).肺癌の病期分類では上大静脈,大動脈,左房,心膜内の肺動脈·肺静脈,腕頭動静脈,鎖骨下動静脈,食道,椎体,気管分岐部への浸潤はT4に分類され,局所進行と同時に広範なリンパ節転移を有することが多いため,切除の適応となる比率は極めて少ない.隣接臓器への浸潤の評価を可能な限り正しく行うとともに,縦隔リンパ節転移の有無が手術適応決定に必要である.根治術を行いうる症例は限られており,手術リスクも高いが,完全切除かつ組織学的にN0,1症例では長期生存も期待しうる.今後は正確な術前診断の進歩や周術期治療も含めた集学的治療の開発が期待される.

キーワード
肺癌, 手術療法, 病期, 拡大手術, 集学的治療


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