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日外会誌. 113(4): 378-383, 2012


特集

内分泌外科稀少疾患の日本の現状把握と診療指針の作成

7.褐色細胞腫の実態および診断基準と診療アルゴリズム

1) 国立病院機構京都医療センター 内分泌代謝高血圧研究部
2) 東京女子医科大学 第二内科

成瀬 光栄1) , 立木 美香1) , 難波 多挙1) , 中尾 佳奈子1) , 田上 哲也1) , 田辺 晶代2)

I.内容要旨
褐色細胞腫は治癒可能な内分泌性高血圧の代表的疾患とされるが,その約10%は悪性例である.初回手術時の病理組織学的検査で良悪性の鑑別が困難で,術後一定期間を経て骨転移などが出現し悪性と判明する.有効な治療法が未確立な難治性内分泌疾患の代表といえる.平成21年度の全国疫学調査では良性2,600,悪性320例,男女差なく,発症は平均40-45歳であるが幅広い年齢層に見られる.高血圧を主とする症候性が約65%である一方,約35%は無症候性で,副腎偶発腫瘤としての発見も少なくない.副腎外,両側性,悪性,家族性は約10%である.厚労省研究班では診断の標準化を目的として,従来なかった「褐色細胞腫·パラガングリオーマの診断基準」と「悪性褐色細胞腫·パラガングリオーマの診断基準」を作成すると共に,標準的な診断·治療に関するアルゴリズムを作成した.典型的な褐色細胞腫ではカテコールアミン過剰の証明,CTなどによる局在診断により診断は容易で,手術による腫瘍摘出が最善の治療である.一方,悪性例の治療は確立しておらず,α遮断薬を主とする薬物治療を基盤として,131I-MIBG内照射,CVD化学治療,骨転移に対する治療などの集学的治療を行う.臨床的に最も重要な点は,「良性」と思われた単発性腫瘍であっても,必ず定期的な経過観察を行うことである.

キーワード
褐色細胞腫, パラガングリオーマ, MIBG, カテコールアミン, CVD化学療法


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