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日外会誌. 113(4): 351-355, 2012


特集

内分泌外科稀少疾患の日本の現状把握と診療指針の作成

2.多発性内分泌腫瘍症研究コンソーシアム

信州大学医学部 遺伝医学·予防医学講座

櫻井 晃洋

I.内容要旨
多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia,MEN)は頻度の低い常染色体優性遺伝性疾患であり,わが国における診療の実態は不明な点が多く,医療連携の構築もなされていなかった.われわれは2008年にMEN診療のさらなる向上をめざして,私的な研究グループとして多発性内分泌腫瘍症研究コンソーシアム(MENコンソーシアム)を設立した.MENコンソーシアムの目標は,1)現在のわが国におけるMEN診療の現状を明らかにする,2)MENに関連する基礎研究を進める,3)診断治療の向上をはかる,4)MENの認知度を高めるために医療者と患者·家族,市民に向けた啓発活動を進める,5)患者·家族団体に対する支援を行う,などである.これまでにMEN1,MEN2あわせて1,000例を超える症例の登録がなされ,これに対する解析も進んでいる.MENコンソーシアムで構築した患者データベースはアジア圏では最初の取り組みであり,その患者数は世界でも最大級のものである.個々の医療者の努力のみでは克服しがたい稀少難病の診療の向上を可能にするものは多数の施設·医療者,さらには患者と家族によるネットワークの構築である.MENコンソーシアムも診療,情報,研究,支援の4つのネットワークを通じて,MENの診療のさらなる向上に寄与したいと考えて活動を続けている.

キーワード
データベース, ネットワーク, 遺伝子解析, 診療指針, 患者会


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