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日外会誌. 113(2): 210-214, 2012


特集

癌研究における最近の進歩

8.癌における遺伝子多型研究の重要性

1) 九州大学病院別府病院 外科
2) 大阪大学 消化器外科

高橋 佑典1)2) , 三森 功士1) , 森 正樹2)

I.内容要旨
2007年以降,SNP(single nucleotide polymorphism:一塩基多型)のgenotypingの進歩に伴いSNPをゲノム上のマーカーとした遺伝子多型研究(genome-wide association study:GWAS)が広く行われるようになった.遺伝子多型研究は,網羅的に全ゲノムを対象とし,多数のサンプルを用いる解析で,疾患相関領域を特定できる強力な手法である.これにより複数の癌種において,genome上に多数の疾患相関領域が報告されてきた.しかし,実際に相関領域が疾患の発症にどのように寄与するかに関して,その機序が示された報告は多くない.それは,これまでに同定されたSNPが遺伝子上に存在しアミノ酸置換を伴うことが稀で,遺伝子間やイントロンに存在する場合が多く多型と疾患の因果関係の解析が困難であるためである.個々のSNPによる発症リスクはodds ratio(OR)=1.2∼1.5程度と決して高いものではないが,複数の領域がくみ合わさって発症リスクとなる可能性が考えられている.また,8q24など複数の癌種において共通の相関領域がみられる場合もある.遺伝子多型解析により得られたデータから,non-coding RNAを含む新規の転写産物の発見や,解析手法の発展による新たな発癌機構の解明が期待される.

キーワード
遺伝子多型研究, SNP, GWAS

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