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日外会誌. 113(2): 204-209, 2012


特集

癌研究における最近の進歩

7.癌幹細胞の概念と意義

1) 大阪大学 消化器癌先進化学療法開発学
2) 大阪大学 消化器外科

原口 直紹1) , 石井 秀始1) , 坂井 大介1) , 佐藤 太郎1) , 土岐 祐一郎2) , 森 正樹2)

I.内容要旨
癌幹細胞は癌を形成する細胞学的階層構造の根源の細胞集団であり,癌細胞を供給し癌組織を維持していく細胞である.このような自己複製能や多分化能といった幹細胞性を有し,さらに高い造腫瘍能を有する癌幹細胞は同時に高い治療抵抗性を有しており,癌幹細胞の標的化こそが癌の根治につながる次世代型の癌根治療法につながると期待されている.癌幹細胞を標的とした治療を開発する上では,癌幹細胞のみに特異的に発現している分子や表面抗原を標的化するのが最も好ましいが,それらを検索するためには,癌幹細胞を高度に純化することが必須である.しかし,現在のところ,癌幹細胞を完全に純化するまでには至っていなく,残念ながら癌幹細胞を完全に標的化し制御する技術の開発にまでは至っていない.しかし,そのなかでもいくつかの可能性を有する研究成果が報告されてきている.これらは,癌幹細胞で発現が亢進し依存性が高い分子を標的化したものや,正常組織分化機構を模した分化誘導療法である.今後,更なる特異的性を有し,かつ効果の高い治療分子が同定されていくことが期待される.一方,近年,癌幹細胞概念自体も多様化してきており,癌幹細胞の治療戦略を構築していくためにも癌幹細胞の本質を厳密に解明していくことが必要である.

キーワード
癌幹細胞, 自己複製能, 治療抵抗性, 再発, 転移


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