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日外会誌. 112(5): 325-329, 2011


特集

直腸癌治療の最近の動向

6.下部直腸癌側方リンパ節転移の治療―JCOG0212からJCOGXXへ―

国立がん研究センター中央病院 大腸外科

森谷 宜皓 , 赤須 孝之 , 藤田 伸 , 山本 聖一郎 , 稲田 涼 , 高和 正

I.内容要旨
米国で側方リンパ節転移に対する外科治療が実践されたが生存率は向上せず,逆に出血量,合併症,機能障害の増加を招き,拡大手術は否定され今日に至っており我が国とは事情が著しく異なる.TMEは安全性が高く局所再発率の低い直腸切除術として登場し,わずか10年間で,欧州を中心にstate of artの座についたが,科学的方法論を経て標準術式と成ったものではなく側方リンパ流には対応していない.直腸間膜の側方から血管,神経が分布する領域は筋膜構造が欠如し側方リンパ流の起始部となり直腸間膜外のリンパ流と合流する.転移頻度と治療効果から重要な部位は,中直腸動脈根部リンパ節,閉鎖リンパ節,内腸骨動脈リンパ節である.JCOG0212が開始され701例をもって2010年8月登録が終了した.結果が待たれる.
欧米同様T3以上のすべてを対象にpre-CRTを施行する治療戦略にはコンセンサスが得られない.中長期の機能障害をもたらすのみならず医療費の浪費にもつながる.pre-CRTの対象としては局所再発高危険群を絞り込んだ治療戦略が我が国においては重要となる.JCOG0212の対象となった微小側方リンパ節転移巣に対してはpre-CRTは有効であるのか?未だ答えを持たない.欧米に比べ日本の外科医は,下部直腸癌に対する治療法としてpre-CRTとTMEのみでなく,治療効果の高い側方郭清術なる外科的治療法を一つ多く使うことができる好位置に居る.

キーワード
側方リンパ流, 側方郭清, 下部直腸癌, 放射線化学療法

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