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日外会誌. 112(5): 313-317, 2011


特集

直腸癌治療の最近の動向

4.進行直腸癌に対するTMEと放射線·化学療法

防衛医科大学校 外科

長谷 和生 , 橋口 陽二郎 , 神藤 英二 , 上野 秀樹 , 山本 順司 , 望月 英隆

I.内容要旨
直腸癌は結腸癌に比べ術後再発率が高率であり,その大きな要因の一つとして直腸癌の局所再発率が結腸癌に比べ高いことが挙げられている.したがって直腸癌の治療成績向上のためには局所を制御して局所再発を低減させることが重要である.局所を制御するための治療法には本邦と欧米の間に大きな違いがある.すなわち本邦では術前治療を行わず,total mesorectal excision(TME)あるいはtumor specific mesorectal excision(TSME)に側方郭清を加える手術の単独で治療する施設が多いが,欧米では術前に化学放射線療法(CRT)を行った後にTMEあるいはTSMEを行うのが標準的治療である.これまでの臨床試験では,術前CRT併用により,局所再発抑制は期待できるが,生存率の改善には結びつかず,また術後排便機能障害を生じうるという報告が多い.生存率の向上のためには,遠隔再発の制御が必要であり,最近ではCRTに新しい抗癌剤のレジメンを用いて強力に行うことが試みられている.本邦では,CRTを加えなくても,手術単独で欧米と同等以上の治療成績が得られている現状を考えると,直腸癌全例に対してCRTは必要ではない.術前CRT併用が手術単独より優れている症例をいかにして治療前に選別し,有効なレジメンの化学療法と適切な方法の照射を行うことにより生存率が改善できるか,を明らかにすることが,今後の課題と考えられる.

キーワード
直腸癌, 化学放射線療法, 放射線療法, TME, 側方郭清

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