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日外会誌. 112(4): 240-244, 2011


特集

先天性心疾患合併小児外科疾患の最新の治療戦略

5.先天性心疾患合併小児外科疾患の治療戦略―小児外科医の立場から―

岩手医科大学 外科

水野 大

I.内容要旨
近年の周産期医療技術の進歩により,多くの小児外科疾患,先天性心疾患が早期診断されるとともにその治療成績も向上しているが,互いの領域に対する認識不足から自分の領域の積極的外科治療を躊躇することが稀ながらある.しかし,これら症例の中には,今日の小児外科および小児心臓血管外科の総力を結集すれば救命し得るものも存在する.我々の施設ではこれら合併症例に対し,NICU医を中心とした小児外科医,小児循環器医,小児心臓外科医,産科医,小児麻酔科医,臨床工学士,WOC看護師など多職種からなる診療チームを作り横断的に意見を出し合い,個々の症例に最適なオーダーメード型治療戦略を立てている.2007年1月以降17例が本体制の下に治療され,かつてなら救命率自体も低くたとえ救命し得ても発達障害などの後遺症を来すリスクの高かった,高位鎖肛,尿路感染を頻発する両側膀胱尿管逆流症,無脾症候群(共通房室弁,肺動脈閉鎖,総肺静脈還流異常)を合併した症例および,全結腸および回腸60cmにわたる広範囲無神経節症(ヒルシュスプルング病)に左室性単心室,肺動脈閉鎖を合併した症例を含め12例を救命し得,良好なQOLが得られている.一方,心臓外科手術後に2例を腸管虚血で失っており,今後は心臓外科疾患自体あるいはそれに対する治療と腸管虚血の因果関係を解明し,早期発見あるいは予防することが救命率向上を目指す上での課題である.

キーワード
小児外科疾患, 先天性心疾患, 治療戦略, 虚血性腸炎

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