[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (393KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 112(2): 117-121, 2011


特集

食道癌の最新治療

7.サルベージ手術

国立がん研究センター中央病院 消化管腫瘍科食道外科

日月 裕司 , 外村 修一 , 井垣 弘康

I.内容要旨
根治的化学放射線療法後の癌遺残または再発に対し,治癒の可能性のある唯一の治療オプションはサルベージ手術である.R0が得られないと判断された場合はリスクの高いサルベージ手術は中止すべきである.高い合併症率,在院死亡率が報告されており,安全を優先し予防的な拡大切除,拡大郭清はすべきではない.放射線障害による気道系の血流障害がおこるため,気管支動脈,下甲状腺動脈からの気管への分枝,これらをつなぐLateral longitudinal anastomosisの温存に努める.吻合される頸部食道や胃管先端が放射線の照射野に含まれる場合は,血流の確実な部位での吻合に努める.吻合部縫合不全による感染が波及した場合は,気管の穿孔や壊死,血管の破綻や大出血を引き起こす.これを避けるために胸骨後を再建経路とし,吻合部は気管,血管と隔離するように努める.放射線療法後数カ月経過した後でも,免疫機能低下による易感染性,放射線障害による間質性肺臓炎,胸水貯留,心嚢水貯留,心外膜炎,心筋障害などが発生する可能性があり,サルベージ手術後もこれらを考慮した対応が求められる.治癒と長期生存の可能性のためには,サルベージ食道切除の高い合併症率も受け入れられる範囲である.サルベージ食道切除は,慎重に適応を検討された患者に対して,食道癌治療の専門医がいるセンター病院で行われなければならない.

キーワード
食道癌, 化学放射線療法, サルベージ手術

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。