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日外会誌. 112(2): 104-110, 2011


特集

食道癌の最新治療

5.補助化学療法

東京歯科大学市川総合病院 外科

佐藤 道夫 , 安藤 暢敏

I.内容要旨
本邦における胸部食道癌に対する手術単独治療の成績は,stage Iで5年全生存率88%,stage II+IIIで52%と報告されている.stage II+IIIに対しては,手術単独治療では満足のいくものではなく,有効な補助療法を用いた集学的治療の開発が必要である.食道癌に対する手術補助療法には化学療法と化学放射線療法がある.本邦において手術補助療法は全身的な治療効果が期待される化学療法がおこなわれてきており,その有効性を検証する大規模ランダム化比較試験(RCT)が行われた.2003年に報告されたJCOG 9204臨床試験では,シスプラチンと5FU(FP療法)による術後補助化学療法により再発予防効果が立証された.続いて行われたJCOG 9907臨床試験では,術前化学療法が術後化学療法より有効であることが証明された.この結果現時点では,c-Stage II/IIIの胸部食道扁平上皮癌に対する標準治療は術前化学療法+手術とみなされている.
一方,欧米では補助療法として化学療法と化学放射線療法が行われてきたが,近年では化学放射線療法が主流となってきておりその有効性が検証されている.本邦では補助化学放射線療法の有効性を検証した大規模RCTは行われていない.
FP療法による術前化学療法はc-stage II+IIIに対し手術成績の上乗せ効果が証明されたが,より進行症例に対しては十分な治療成績が得られたとはいい難い.今後の課題として,このような症例に対してFP療法を凌駕する強力な補助療法の開発が期待されている.

キーワード
胸部食道癌, 補助化学療法, 術前化学療法, 集学的治療, JCOG study

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