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日外会誌. 111(2): 97-101, 2010


特集

動脈閉塞症に対する手術 vs 血管内治療治療成績からみた選択基準

5.下腿動脈病変 
2)バイパス術

旭川医科大学 外科学講座循環·呼吸·腫瘍病態外科学分野

東 信良

I.内容要旨
糖尿病性壊疽が増加し続ける現代において,下腿動脈は,救肢を達成する上で避けては通れない最も重要な領域となっている.下腿動脈は糖尿病性動脈硬化症(DMASO)の好発部位であり,び慢性の狭窄ないし閉塞病変が起こるが,下腿末梢から足部の動脈は病変を免れることが多い.そのため,DMASOは下腿末梢から足部の動脈を末梢吻合部とするバイパス術の最も適した病態であり,静脈グラフトによるバイパス手術がこの領域の血行再建のgolden standardとなっている.この血行再建術の長所として,1)直接虚血組織へ大量の血液を供給できること,2)石灰化例や末梢run-off不良例に対しても対応できること,3)内皮細胞被覆内面を提供する血行再建であるため,長期にわたって開存可能であることが挙げられる.したがって,特に(1)充分な血液供給が要求される組織欠損の大きな重症虚血肢(CLI),(2)高度石灰化例,(3)長期余命を期待できる症例に威力を発揮する.現状では,下腿領域における血管内治療(EVT)のエビデンスは確立されていないが,今後EVTが進歩し,許容可能な長期成績が得られるようになれば,バイパス術とEVTのそれぞれの長所をよく理解した上で,病変形状や石灰化の状態,虚血重症度,組織欠損の大きさ,静脈の質,および,期待される余命などの条件を基準にして,バイパス術にすべきかEVTにすべきかを選択する時代が来るであろう.

キーワード
静脈グラフト, 重症虚血肢, 糖尿病性壊疽, 救肢


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