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日外会誌. 111(1): 3-7, 2010


特集

消化器外科術後食に関する新しい考え方

2クリニカルパス導入の効果

函館五稜郭病院 外科

岡田 晋吾

I.内容要旨
今やクリニカルパス(またはクリティカルパス以下パス)は我が国の医療になくてはならないものとなっている.パス導入のメリットとして,医療の標準化,平均在院日数の短縮,EBM(evidence-based medicine)の導入,不要な薬剤や検査の削減などがあげられている.パスを運用するうえで大切なことはパスを一度作成したら終わりとすることではなく,パスを繰り返し見直すことにより,その時点で考えられるベストの医療を提供できるようにすることである.このようなパスの定期的な見直しにより今まで長年にわたって漫然と行われていた医療行為の多くが見直され,効率的で質の高い医療が提供できるようになってきている.パスは内科よりも外科領域において積極的に導入され,多くの病院で手術を中心としてさまざまなパスが作成,運用されるようになっている.パスを作ることで今まであまり見直されることのなかった周術期管理法に関しても検討され,実際の医療行為に反映されるようになっている.たとえば剃毛の廃止,予防的抗菌薬投与の薬剤,投与日数の変更など周術期管理法に大きな変化をもたらした.術後食に関しても絶飲食期間や食事の内容の見直しがなされ,以前に比べて早期から食事が開始され,十分なエネルギー量を摂取できるようになっている.そのため以前は胃全摘術などで多く行われていたTPNが必要なくなり,TPNに伴う合併症の減少などの効果ももたらしている.このように術後食の見直しにパスが果たした役割は大きいと考えるが,同時期に腹腔鏡下手術の普及,NST(Nutrition Support Team)による栄養管理の知識の広がりなどとの相乗効果もあったと考えている.

キーワード
クリニカルパス, クリティカルパス, 術後食, 栄養管理, NST

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