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日外会誌. 110(6): 338-342, 2009


特集

胸膜中皮腫の治療法の動向

5.胸膜中皮腫の治療戦略

兵庫医科大学 呼吸器外科

長谷川 誠紀

I.内容要旨
切除可能MPMは,手術単独での治療成績が不良のため,術前化学療法·胸膜肺全摘術·術後一側胸郭全照射による集学的治療が国際的にも「標準治療」とされている.最近相次いで発表された欧米での集学的治療に関する大規模試験において,プロトコール完遂率は50%程度にとどまり,一方その生存中央期間は14-16カ月に過ぎなかった.すなわち,この治療法のoverallでのrisk/benefitは現時点では不満足なものである.しかしながら,pN0-1でプロトコールを完遂できたサブグループにおいては生存中央期間が59カ月に達しており,このような患者を選択して治療することが最重要課題であることが明らかになった.
現時点での切除可能MPMの治療戦略は以下の通りである.(1)胸膜肺全摘術を含む集学的治療が基本である.(2)そのような大侵襲を伴う治療においてもacceptableなrisk/benefitが見込める患者のみを治療対象にすること.すなわち,(i)radicalな治療に対する十分な忍容力を担保すること,(ii)比較的早期であること(病期過小評価を避けること,pN0-1が目標)を条件に慎重な患者選択を行うことが非常に重要である.
現在国内では集学的治療に関するfeasibility testが進行中である.

キーワード
悪性胸膜中皮腫, 胸膜肺全摘術, 化学療法, 放射線療法, 集学的治療

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