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日外会誌. 110(4): 191-194, 2009


特集

小児外科疾患術後患者の長期予後―成人期における諸問題―

4直腸肛門奇形(高位鎖肛)術後

国立成育医療センター 外科

黒田 達夫

I.内容要旨
直腸肛門奇形,特に高位病型や総排泄腔型病型の術後に様々な問題をキャリーオーバーして成人化している症例の報告は国内外を通じて多い.高位病型の術後に完全に正常の排便機能を獲得する事は不可能とされ,電気刺激により外肛門括約筋化した薄筋を移植するなどの排便機能付与手術の試みもあるが,長期的な有用性は限定的である.直腸肛門奇形に加えて,神経因性膀胱など排尿機能や尿路の問題を合併する症例も多い.下部尿路の奇形や排尿障害は,長期経過を経て腎不全のような上部尿路の問題を併発してくる場合もある.多くの成人化症例でこうした排便,排尿に関する問題が就業や結婚などの成人期の社会的活動の障害となっていることが報告される.総排泄腔遺残のような重篤な奇形の修復後も含めて直腸肛門奇形術後の出産例も報告されるが,近年,勃起障害や逆行性射精など男性不妊,性交困難症などの生殖機能障害の実態も明らかにされつつある.これらの諸問題について,小児期から成人期にわたり総合的に治療,支援してゆく必要があり,医療体制の整備が今後の課題と考えられる.

キーワード
直腸肛門奇形, キャリーオーバー, 生殖機能障害, 神経因性膀胱, QOL


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