[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (470KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 109(6): 338-342, 2008


特集

日本と世界の各種外科疾患における診断·治療戦略の相違

5.大腸癌―日本と世界の直腸癌治療戦略の相違―

帝京大学 外科

渡邉 聡明

I.内容要旨
大腸癌に対する診断および外科治療においては,本邦と海外で様々な相違点が存在する.このうち,特に大きな違いが認められるのは直腸癌の外科治療である.直腸癌の外科治療では,局所再発を如何に回避するかが重要な課題である.このために,本邦は手術療法を重視した独自の道を発展させてきた.すなわち,側方リンパ節郭清により局所再発を防ごうというアプローチである.これに対して,欧米を中心として,海外では手術と放射線療法を組み合わせた集学的治療が標準治療として確立されている.また,これまでの報告によれば,日本と海外では,外科治療後の術後成績も異なり,海外の術後成績に比べて本邦の成績は良好な結果が示されている.この背景には,手術の技術的な要因,リンパ節の検索方法の違いによるstage migrationの可能性,手術方法の違い,体型の違いなど様々な因子が関与している可能性がある.しかし,問題となるのは,術後補助化学療法に関してである.最近は,海外の大規模臨床試験の結果が報告され,FOLFOXや,これに分子標的薬などを追加したregimenが術後補助化学療法として有効性が示されている.しかし,本邦で術後補助化学療法を行う際に,果たしてStage III症例の術後成績が異なる海外のエビデンスをそのまま外挿してよいかが,問題となる.このような本邦と海外との術後成績の違いを考慮した上で,本邦に適した術後補助化学療法を確立していくことが,直腸癌を含めた今後の大腸癌治療に求められる点である.

キーワード
大腸癌, 直腸癌, 側方郭清, 放射線療法, 化学療法

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。