[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (228KB) [会員限定]

日外会誌. 109(5): 274-277, 2008


特集

消化管再建術の現状と将来―最良の再建術は何か―

7.低位前方切除後再建術

帝京大学ちば総合医療センター 外科

幸田 圭史 , 安田 秀喜 , 鈴木 正人 , 山崎 将人 , 手塚 徹 , 小杉 千弘 , 樋口 亮太 , 杉本 真樹 , 平野 敦史 , 植村 修一郎 , 土屋 博紀

I.内容要旨
直腸低位前方切除術に対する再建術の目的は,術後に現れる排便障害の改善を目指すものである.直腸癌術後排便障害の成因として従来,術後肛門括約筋の障害が広く認知されてきたが,近年では骨盤底筋群の運動能,新直腸の収縮能などその他の要因の異常による排便障害の可能性についても報告がみられるようになってきた.再建方法の工夫としてはJ-パウチ作成が最も一般的におこなわれており,欧米ではTotal mesorectal excision(TME)後に広く行われている再建方法である.この利点はストレート(端々)吻合に比べての新直腸容量の増大であるが,あまり大きなパウチは長期的にみると排便障害が生じることがあり,近年では5―6cmの小さいパウチがよいとする報告が多い.パウチ再建では特に手術後早期における排便障害の程度がストレート吻合に比べて勝っていると報告されているが,長期においてはストレート吻合でも機能が回復し,ほぼ同等になるとする報告もある.オプションとしてはさらに小さいパウチと考えられるside-to-end(側端)吻合があり,術後排便機能は術後早期を除いてJ-パウチに匹敵するとする報告が多い.J-パウチはそのサイズが大きいため,特に肥満や狭骨盤の場合にはTransverse coloplasty pouch(TCP)が用いられることがあり,これも機能面ではJパウチに匹敵すると考えられるが,作成手技がやや煩雑であるため合併症が多少増加することが危惧される.特に超低位での吻合においてはストレート吻合よりも術後早期での排便障害を軽減することが期待されるパウチ作成を行うことが有用であるとする報告が多い.

キーワード
低位前方切除術, 肛門括約筋温存手術(SPO), Jパウチ(J-pouch), Transverse coloplasty pouch(TCP), 側端(side-to-end)吻合


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。