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日外会誌. 109(5): 269-273, 2008


特集

消化管再建術の現状と将来―最良の再建術は何か―

6.大腸全摘後再建術

1) 横浜市民病院 外科
2) 横浜市大市民総合医療センター炎症性腸疾患センター 
3) 松島クリニック 

杉田 昭1) , 小金井 一隆1) , 木村 英明2) , 山田 恭子1) , 二木 了1) , 鬼頭 文彦1) , 福島 恒男3)

I.内容要旨
大腸全摘術の主な対象疾患は潰瘍性大腸炎と家族性大腸腺腫症である.再建術は直腸粘膜抜去を行う回腸嚢肛門吻合術,または肛門管を温存する回腸嚢肛門管吻合術が標準術式で,前者は根治性が高く,後者は漏便が少なく,一期手術の率が高いという特徴がある.手術前後のQOLの縦断的検討(SF36)では,両手術とも術後にQOLは改善した.術後の大腸発癌は回腸嚢肛門管吻合術では頻度は少ないものの可能性があるため定期的な内視鏡検査が必要であり,また回腸嚢肛門吻合術での報告もあるため注意を要する.また,回腸人工肛門術は肛門機能不良例に行い,術後QOLも不良ではないことも理解する必要がある.再建術の選択は手術適応,肛門機能に加えて患者の希望も考慮して術式を選択する.回腸嚢手術が将来,更に良好なQOLを得るには,人工肛門造設頻度の減少,排便回数の減少,漏便の減少,回腸嚢炎の原因解明が重要と考えられる.

キーワード
大腸全摘術, 潰瘍性大腸炎, 家族性大腸腺腫症, 手術術式, 術後経過

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