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日外会誌. 109(4): 225-229, 2008


外科学会会員のための企画

外科医療における裁判外紛争処理(ADR)

裁判外紛争処理のあり方

神谷法律事務所弁護士 

神谷 惠子

I.内容要旨
医療事故紛争についてもADRの活用が注目されてきている.
ADRは,現状の裁判では難しいとされる効率的,専門的な要求に対応可能であること,また,当事者間の関係を柔軟に調整できることから,医療事故紛争にも有効に機能すると考えられている.医療ADRを実効あらしめるためには,効率性,専門性は当然の要求であるが,当事者の関係調整として何をすべきか.
この点については,「被害者の5つの願い」に遡って検討する必要がある.そこには,当事者の一方である患者家族が求める原点があり,他方医療機関が果たしていかなければならない責務がある.この検討から医療ADRを考えたとき,院内ADRは,多少の問題点はあるが,初期対応として非常に重要な位置付けを有する.事故発生時から医療者,患者家族が対話を継続することで不安,不信を払拭し,解決へと進むことが可能となる.特に,事故原因の究明は,ADRの前提として欠かすことができないものであり,不幸な結果に対する遺憾の意の表明や謝罪は,ADRにとって必須である.

キーワード
ADR, 医療訴訟, 「被害者の5つの願い」, メディエーター, 無過失補償


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