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日外会誌. 109(4): 194-200, 2008


特集

心臓血管外科の最新治療

3.弁膜症

鹿児島大学 循環器·呼吸器·消化器疾患制御学

上野 隆幸 , 坂田 隆造

I.内容要旨
弁膜症に対する最近の外科治療は罹患弁位にもよるが,現在のところ自己弁を温存する弁形成術が主流となってきている.僧帽弁位では変性疾患,感染性心内膜炎による器質性僧帽弁逆流や虚血性心疾患や拡張型心筋症に伴う機能性僧帽弁逆流に対する外科治療が主体となってきた.特に,機能性僧帽弁逆流に対する外科治療は左室·僧帽弁のジオメトリーを修復することが重要で,左室形成および弁下組織に対する各種のsubvalvular procedureによる僧帽弁のtethering reductionの意味合いが強く,最近のトピックスでもある.僧帽弁位において弁形成術が弁置換術に比べて弁下組織と弁輪の連続性が保たれることにより,術後遠隔期心機能,生存率が優れていることは既に報告されている.大動脈弁位では大動脈弁狭窄症,閉鎖不全症ともに,外科的介入が必要となることが多い.大動脈弁位では弁置換術の成績が良好で,大動脈弁狭窄症,閉鎖不全症ともに弁置換術が大部分の症例で行われている.近年,大動脈弁閉鎖不全症に対しては弁形成術が試行されており,大動脈弁逆流の原因に則した各種の形成手技が一定の効果をあげている.しかし,まだ遠隔成績が不明な点もあり,今後の症例蓄積と結果が待たれるところである.どの弁位にしても形成術の耐久性が今後の課題であり,適応の検討と手術手技の改良によって遠隔期成績はさらに向上するものと期待される.

キーワード
僧帽弁閉鎖不全症, 機能性僧帽弁逆流, 大動脈弁閉鎖不全症, 弁形成, 弁置換


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