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日外会誌. 109(1): 37-44, 2008


外科学会会員のための企画

がん対策基本法をめぐって

がん対策基本法の意義とがん医療の課題∼立法過程からみた取組の方向性∼

前参議院厚生労働委員会調査室首席調査員 

小林 仁

I.内容要旨
アメリカで “National Cancer Act” が制定されたのは,1971年のことである.それから遅れること35年,漸くわが国においても「がん対策基本法」(以下「基本法」という.)が制定され,2007年4月から施行された.基本法の定めるところに従い,がん患者が初めてがん医療の政策立案過程に参画する「がん対策推進協議会」が設置され,その議論を経て,「がん対策推進基本計画」が2007年6月,策定された.
本稿では,本則20条と附則2条からなる基本法について,その意義を明らかにするとともに,国会の附帯決議等で示された課題と取組の方向性を紹介する.
立法過程で明らかとなったのは,がん登録や緩和ケアなど,山積する課題に対する対応の遅れと,いわゆる「がん難民」を生む現状に対する厳しい評価である.しかしながら,これは国民が患者本位のがん医療を真摯に望んでいることの証左でもある.
がん医療が限りなく重い課題を背負うのは,その営みが病気を治すだけでなく,不治の人びとと誠実に向き合うことをも重要な任務とするからである.
関係各位におかれては,基本法に託された願いに思いを馳せ,基本法の理念に立脚したがん医療を展開すべく,その重責を果たされんことを切に望むものである.
なお,筆者は現在,参議院法制局において課長の職にあるが,本稿における私見は,筆者の勤務先の見解ではないことをお断りしておく.御了承願いたい.

キーワード
がん対策, 附帯決議, がん検診, 緩和ケア, がん登録

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