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日外会誌. 109(1): 21-25, 2008


特集

食道癌治療―最近の動向―

5.標準的根治術―開胸―

東京歯科大学市川総合病院 外科

佐藤 道夫 , 安藤 暢敏

I.内容要旨
胸部食道癌に対する標準的根治手術として右開胸開腹食道切除郭清術が行われてきたが,近年の内視鏡下手術の開発や,化学療法·化学放射線療法の治療成績の向上とともにその位置づけが変わりつつある.
標準的根治手術の適応は,内視鏡治療の適応のないstage I,stage II,T4を除いたstage IIIである.stage Iに対する化学放射線療法の良好な成績をうけて,食道切除術vs化学放射線療法のランダム化比較試験(RCT)が開始された.
本邦における胸部食道癌に対する手術単独による治療成績は,stage Iでは5年全生存率88%,stage II+IIIでは52%である.
リンパ節郭清における重点箇所は頸部から上縦隔郭清への領域であり,本邦では3領域郭清が広くおこなわれているが,3領域郭清が必要であるという科学的根拠も2領域郭清で十分とする根拠もない.Utには頸部郭清が必須だが,Mt,Ltには縦隔側からのアプローチによる101の郭清までで十分とする意見と,両側頸部よりの頸部リンパ節郭清が必要とする意見がありコンセンサスは得られていない.
胸部食道癌に対する術後補助化学療法の有効性は本邦におけるRCTにて証明され,さらに今後術前補助化学療法への移向が予想される.

キーワード
食道亜全摘術, 開胸, 3領域郭清, 上縦隔郭清, ランダム化比較試験


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