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日外会誌. 108(2): 73-79, 2007


特集

大動脈弁膜症における人工弁の選択―機械弁か生体弁か―

5.ステントレス(フリースタイル)弁の適応

大阪大学外科学講座 心臓血管外科・呼吸器外科

福井 伸哉 , 松宮 護郎 , 松江 一 , 澤 芳樹

I.内容要旨
近年,平均寿命の延長,また人工弁の改良に伴い,弁膜症における弁種選択がより一層難しくなってきている.生体弁による弁置換術は,1962年にRossにより同種大動脈弁置換術が行われたことをかわきりに,急速に普及した.その供給不足を補うべくブタ弁やウシ心膜弁によるステント付生体弁が開発されたが,有効弁口面積が小さい,耐久性の限界などの問題点を有していた.これらの問題を打破するべく,ステントレス生体弁が開発され,近年,その遠隔成績が報告されるようになり,良好な抗血栓性,耐久性,血行動態が示されてきている.当科では,これまで61例にステントレス生体弁を使用,手術死亡1.6%と低率で,症状の改善,左室容積収縮能,左室肥大の改善を得た.また,MRIによる血流速度解析で,ステント付生体弁に比し良好な流速波形を得た.ステントレス生体弁は,その手術の煩雑さによる手術時間の延長などの理由で避けられがちであるが,より良好な弁開放による血行動態の改善が得られ,その耐久性を考慮しても,基部置換例,狭小弁輪例やスポーツなどによる運動負荷が予測される例などには良い適応であると考えられる.

キーワード
ステントレス生体弁, フリースタイル生体弁, 大動脈弁置換術

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