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日外会誌. 107(6): 278-283, 2006


特集

縦隔疾患に対する外科的アプローチ

6縦隔原発胚細胞性腫瘍の外科治療成績

名古屋市立大学 腫瘍·免疫外科学

矢野 智紀 , 藤井 義敬

I.内容要旨
縦隔胚細胞性腫瘍は比較的希な腫瘍であり,多彩な腫瘍が含まれ,また複合型の頻度も高く,複雑な背景がある.成熟奇形腫に対する治療は外科切除であるが,巨大腫瘍や高度癒着例に対する手術は難易度も高く,肺全摘を要するような症例の手術は特に注意を要する.また高齢者症例では悪性転化を伴うこともある.悪性胚細胞性腫瘍に対する治療はセミノーマにおいても非セミノーマにおいてもシスプラチンを基本とした化学療法が重要な役割を果たしている.当施設での治療成績は,10年生存率で(他病死を除く)セミノーマが91.7%,非セミノーマが53.0%で,非セミノーマで予後不良な傾向があった.また組織型によらず,転移や播種を伴う症例の予後は不良で,中間生存期間は5カ月であった.非セミノーマがセミノーマに比べて予後不良であるのは非セミノーマには化学療法の無効な症例が含まれること,発見時に既に他臓器に転移を伴う進行症例が多く含まれることが挙げられる.標準治療レジメンの確立や化学療法無効群に対する新たな治療法の確立,また早期発見によって悪性胚細胞性腫瘍の予後が改善される可能性がある.

キーワード
縦隔腫瘍, 胚細胞性腫瘍, 成熟奇形腫, セミノーマ, 非セミノーマ


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