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日外会誌. 107(6): 268-272, 2006


特集

縦隔疾患に対する外科的アプローチ

4重症筋無力症に対する胸腺摘出術

愛知医科大学 外科学講座(呼吸器外科)

羽生田 正行

I.内容要旨
胸腺腫を合併しない,いわゆる自己免疫性の重症筋無力症(MG)に対する外科治療法として,胸腺摘出術が行われている.この治療法は1900年代半ばから始まり,半世紀以上行われているにもかかわらず,その有効性について十分な検討が行われていない.現在までの研究では外科手術がMG改善率に対し有効であるとするものが多いが,症例の評価法あるいは手術方法などの違いや自然経過群との比較がないなどの点から十分評価できるものとはいえない.このような状況を打開するため,Myasthenia Gravis Foundation of Americaでは重症筋無力症の評価法や手術法の標準化を呼びかけているが,まだ手術の有効性について結論は得られていない.このため本邦では多くの施設で,胸腺の摘出範囲(摘出量)が異なる手術が施行されている.また最近では鏡視下手術の進歩もあり,胸腔鏡下あるいは縦隔鏡下に手術を行っている施設も多くなっている.しかしこれまでの報告では,胸腺の摘出範囲が十分な症例ほど重症筋無力症の改善率が高いことが示されている.また,頸部アプローチや鏡視下手術では,経胸骨あるいは経頸部·胸骨アプローチと比較し摘出範囲が狭い可能性が高い.不完全になりがちな手術を導入する前に,randomized studyにて外科手術の有効性をまず明確にしないと,MGに対する胸腺摘出術の意義自体が問われることになるのではないかと考えられる.

キーワード
重症筋無力症, 胸腺摘出術, Myasthenia Gravis Foundation of America


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