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日外会誌. 107(6): 257-261, 2006
特集
縦隔疾患に対する外科的アプローチ
2.胸腺上皮性腫瘍のWHO病理分類
I.内容要旨
胸腺上皮性腫瘍の病理分類は多数提案されてきたが,胸腺腫の病理組織像が生物学的性質を反映するというコンセンサスは得られていなかった.しかし1980年代にWürzburg大学のMüller-Hermelinkらにより提案された,腫瘍の起源(Cortical/Medullary)を基礎とする病理分類の臨床的意義が注目されるとともに,その他の病理分類との混乱も加わり,病理分類の統一が求められるようになった.Rosaiを中心とするWorld Health Organization(WHO)の国際的委員会によりWürzburg分類を基礎として1999年にまとめられた病理分類が,胸腺上皮性腫瘍のいわゆるWHO病理分類である.WHO病理分類は,従来の胸腺腫を腫瘍細胞の形態,異型性の程度,リンパ球の多寡によりType A,AB,B1,B2,B3の5つに分類し,Squamous cell carcinomaをはじめとする胸腺癌と胸腺カルチノイドをまとめてThymic carcinomaとし,胸腺上皮性腫瘍を6つに細分類した.本分類は腫瘍の浸潤性性質,切除後の予後,重症筋無力症の発症頻度と関連性を持つだけでなく,腫瘍細胞の遺伝子学的異常も反映する.本分類は,形態学的な分類にとどまらず胸腺上皮性腫瘍の生物学的性質とも関連しており,本疾患群の臨床上の取り扱いと本腫瘍の機能の解明に貢献するものと期待される.
キーワード
胸腺腫, 胸腺癌, 胸腺カルチノイド, 重症筋無力症, 染色体増幅と欠失
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