[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (375KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 107(4): 187-191, 2006


特集

膵癌治療―最近の動向

7欧における膵癌治療の動向

帝京大学医学部 外科学教室

和田 慶太 , 高田 忠敬 , 天野 穂高 , 吉田 雅博 , 三浦 文彦 , 豊田 真之 , 加藤 賢一郎 , 井坂 太洋 , 長島 郁雄

I.内容要旨
膵癌は21世紀に残された難治癌の1つである.現在のところ,膵癌は早期発見が困難であるため,多くの症例が局所進行または遠隔転移を来たした状態で発見される.これまでに拡大手術や集学的治療により治療成績を向上させる試みが行われ,一定の成果を挙げてきたが,現在でも膵癌の治療成績は満足できるものではない.欧米では,膵癌に対する拡大手術に否定的な意見が多く,最近の国際会議の発表からも,以下のような治療動向が窺える.(1)Staging(より正確なStagingによる手術適応の適正化)(2)Balanced resection(補助療法へ円滑に移行可能な低侵襲手術)(3)Centralized treatment(治療のセンター化)(4)Surgery alone is not enough(外科手術のみでは不十分であり,積極的な補助療法が必要).一方,日本ではこれまで欧米と比較して,膵癌に対して積極的な切除を行ってきた経緯がある.これにより,膵癌の切除率は飛躍的に向上されたが,それに伴う治療成績の向上は得られなかった.近年のRCTの結果からも,拡大リンパ節郭清を含む拡大手術は行われない傾向にある.今後は“どのような患者が手術により利益を得ることが出来るか”を明らかにしていくことが重要であり,日本の拡大手術における血管合併切除,神経叢合併切除の意義についても検討されてゆく必要がある.その一方で,新たな早期発見法および,より効果的な補助療法の開発が膵癌治療成績の向上のためには不可欠である.

キーワード
膵癌, 集学的治療, 手術, 補助療法

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。