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日外会誌. 107(3): 116-121, 2006


特集

大腸癌両葉多発肝転移に対する外科治療

4門脈枝塞栓術を併用した肝切除術

順天堂大学 肝胆膵外科

石崎 陽一 , 川崎 誠治

I.内容要旨
近年,肝切除の安全性が確立され,切除以外の根治的治療法がないことから,大腸癌肝転移に対する手術適応は拡大する傾向にある.(1)原発巣が完全に切除されている,(2)肝転移巣を肝切除により完全に切除できる,という条件を満たせば転移巣の数や大きさに関係なく手術適応となる.しかしながらこの適応を満たしても,根治のために大量肝切除が必要となる症例では術後の肝不全が危惧される.術前のVolumetryで残肝容積が全肝容積の40%以下と予想される症例では術前門脈枝塞栓術を施行する.これにより塞栓葉は萎縮し,残肝容積は10%程度の代償性肥大が期待され,拡大手術後の肝不全のリスクを軽減することができる.門脈枝塞栓術には全身麻酔下に開腹して回結腸静脈からカテーテルを挿入して行う方法(Transileocolic portal vein embolization;TIPE)と超音波ガイド下で経皮経肝的に門脈枝を穿刺して行う方法(Percutaneous transhepatic portal vein embolization;PTPE)がある.塞栓物質も様々で,absolute alcoholやcyanoacrylateなどは組織障害性が強く,塞栓効果も大きい.一方でgelatin sponge powderなどは組織反応も少なく,再疎通するとされている.それぞれの塞栓物質の長所,短所を考慮して選択する必要がある.門脈枝塞栓術は手技に伴う合併症も少なく,門脈枝塞栓術後に切除可能となった症例の生存率は門脈枝塞栓術非施行の切除例の生存率と変わらず,今日では大量肝切除が必要と考えられる症例では重要な手技となった.

キーワード
術前門脈枝塞栓術, 大腸癌多発性肝転移, 拡大肝葉切除, 肝不全, 残肝機能


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