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日外会誌. 107(2): 86-89, 2006


外科学会会員のための企画

組織移植の現状と展望

膵島移植

京都大学医学部附属病院 臓器移植医療部

松本 慎一

I.内容要旨
膵島移植による糖尿病治療は1970年代より開始されたが,2000年に脳死ドナーを利用した成功例が発表され,臨床応用が急速に広まった.しかしながら,我が国では,膵島移植は組織移植の範疇に入り,脳死ドナーの利用は法律上できず,心停止ドナーあるいは生体ドナーを利用せざるを得ない.
我々は,心停止ドナーからの膵島分離方法であるKyoto Islet Isolation Methodを開発し,日本で膵島移植を開始した.現在まで17例の膵島分離を実施し14例分の膵島を移植し,3例分は将来の移植に備えて凍結保存した.移植膵島は全例生着し,レシピエントの血糖値の不安定性が解消した.Kyoto Islet Isolation Methodを用いると,心停止ドナーからの膵島移植であっても欧米の脳死ドナー膵島移植の成績を凌駕する結果が得られた.また,我々のグループはドナー不足を背景に,生体ドナー膵島移植を世界で初めて成功させた.
今後,膵島移植の課題として,移植効率および長期成績の改善,より副作用の少ない免疫抑制剤の開発による小児への移植開始,ドナー不足対策がある.また,膵島移植は,ブタ膵島を用いた異種移植やEmbryonic Stem Cellからの再生によるベータ細胞移植へとつながる.特に異種移植は最近臨床応用が始まり,今後の進展が期待される.

キーワード
膵島移植, 組織移植, Kyoto Islet Isolation Method, 生体膵島移植, 心停止ドナー

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