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日外会誌. 107(2): 64-68, 2006
特集
悪性腫瘍に対する内視鏡外科の現状とその評価
3.乳癌
I.内容要旨
乳腺疾患とくに悪性腫瘍を対象とする内視鏡手術1)
は乳房切除と腋窩処置に分けられるが,乳房切除は1995年から日本で世界初の臨床応用が開始された.胆嚢摘出術をはじめとする内視鏡手術の普及と1990年代からの乳房温存術の急速な普及が背景にある.各施設で行われている乳房切除法は腋窩創単独2)
,傍乳輪切開単独3)
4)
,両皮切併用5)
の3法に大きく分類される.前二者は主として温存術を対象とし,併用法は温存術,全摘術を対象としている.乳房は密な結合織で囲まれているため確実な組織剥離技術が必要であり,乳癌内視鏡手術は組織剥離法の進歩といいかえることができる.筋膜剥離,皮弁作製は従来法の乳癌手術と同等の癌根治性があるため,乳癌根治に皮膚切除が必要でない症例ほとんどすべてが内視鏡手術の適応となる.乳癌内視鏡手術では10年以上の長期成績はいまだ報告はないが,5年生存率は従来法と同等であり6)
,全摘後の胸壁再発,温存後の乳房内再発も従来法の報告と同等かかえって良好な成績である7)
8)
皮膚温存手術であるため全摘には乳房再建,温存には欠損部充填術9)
が必要であるが,できれば同じ皮切を使っての再建・充填術の工夫が望ましく多くの報告がある.将来的に乳房非切除ablation療法10)
11)
,新しい展開をみせる放射線治療,そして内視鏡手術を組み合わせることで癌根治性を保ちつつ低侵襲,良好な整容性が期待できる乳癌の局所制御法へ移行していくものと思われる.
キーワード
乳癌手術, 内視鏡手術, 皮下乳腺全摘術, 乳房再建, 乳房温存術
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