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日外会誌. 107(1): 21-26, 2006


特集

虚血性心疾患治療の新展開

5.虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する外科治療

岩手医科大学附属循環器医療センター 

新沼 廣幸 , 川副 浩平

I.内容要旨
心筋梗塞後の虚血性僧帽弁閉鎖不全症(Ischemic mitral regurgitation:IMR)は軽度であっても死亡率を2倍に増加させ,心不全の発症に大きく関与し慢性期のQOLを著しく阻害するため,外科的治療が必要となる.
IMRは心筋梗塞後の左心室リモデリングのため,僧帽弁機能不全を生じるもので複雑な要因が関与している.梗塞モデルや臨床研究から,心エコー図やMRIさらに蛍光マーカーなどを用いた画像解析によりIMRの原因は左心室リモデリング,僧帽弁輪の拡大と変形および僧帽弁尖のtetheringに分類され,単独もしくは複合していると考えられ病態把握に苦慮することが多い.さらに,IMRは後負荷の変化で逆流量が変化するため,定量的評価が不確定で重症度を誤りやすい.このため,外科的治療の適応や時期決定の判断が困難である.
IMRの外科治療では僧帽弁の接合回復のみならず左心室のジオメトリーにも考慮すべきであり,単純な弁輪形成術のみでは十分な治療効果は得られ難い.また,患者のQOL改善のため可能な限り低侵襲手術を選択すべきである.
IMRの病態解析はいまだ明らかでない部分が多く,手術治療の向上のためさらなる研究が望まれる.

キーワード
myocardial infarction, Ischemic mitral regurgitation, left ventricular remodeling, tethering, mitral valve plasty


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