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日外会誌. 106(12): 740-744, 2005


特集

重症熱傷の治療

4.気道熱傷の診断と呼吸管理

1) 大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター
2) 大阪府立中河内救命救急センター 

小倉 裕司1) , 角 由佳1) , 松嶋 麻子1) , 当麻 美樹2) , 井上 貴明1) , 田崎 修1) , 嶋津 岳士1) , 杉本 壽1)

I.内容要旨
気道熱傷は熱傷患者の予後を大きく左右する因子として半世紀にわたり注目されてきた.皮膚熱傷の治療法が発展した今日においても,気道熱傷の病態の解明と診断・治療法の開発は極めて重要な問題である.通常熱による傷害は末梢気道や肺胞にまで及ぶことはなく,気道熱傷とは主に煙に含まれる有害物資が付着した気道・肺胞上皮で引き起こす化学炎症反応と考えられている.煙の吸入は炎症のきっかけに過ぎず,受傷後進行する一連の炎症反応により,呼吸不全が顕在化し増悪する.
受傷早期に気道熱傷を確実に診断する方法は今なお確立されていない.受傷機転や臨床所見から気道熱傷の合併が疑われる場合,標準的な診断法は気管支鏡により気道粘膜の煤,発赤,腫脹などを確認することである.血中COヘモグロビン濃度の上昇も煙を吸入した証拠となる.画像診断では分解能が向上したヘリカルCTを用いた早期診断が注目されるが,活性化された白血球の肺胞集積を確認する肺胞洗浄液中の機能診断法も期待される.呼吸管理では,気道熱傷に伴う気道の狭窄,無気肺,肺水腫に対し早期から確実な気道確保と適切なPEEPの使用を要し,偽膜形成が進行する症例では徹底した気道の洗浄と偽膜の除去,理学的療法を行うことが不可欠である.呼吸器モードではHigh frequency percussive ventilation(HFPV)の有効性が報告されており,ECMOやliquid ventilation,growth factorsのネブライザー吸入なども今後の課題である.

キーワード
気道熱傷, 病態, 診断, 呼吸管理


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