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日外会誌. 106(8): 459-462, 2005


特集

内分泌外科の臨床診断と外科治療

2.甲状腺分化癌

大阪厚生年金病院 乳腺・内分泌外科

芝 英一

I.内容要旨
甲状腺癌はその組織型により,濾胞細胞由来の甲状腺分化癌と甲状腺未分化癌,C細胞由来の甲状腺髄様癌に分類される.癌ではないが甲状腺原発の悪性リンパ腫も存在する.甲状腺分化癌には乳頭癌と濾胞癌の2種が存在し,両者の予後はヒト癌の中でもきわめて良好である.特に女性,年齢は50歳以下の症例が予後良好とされている.分化癌の診断には触診,エコー検査,エコーガイド下の穿刺吸引細胞診で診断を行うが,乳頭癌の術前診断は比較的容易であるのに対して,濾胞癌の術前診断は濾胞腺腫との鑑別は困難で,特に微小浸潤型の濾胞癌の術前診断はきわめて困難で,通常術後の病理組織診断にて確定診断がなされる.甲状腺分化癌の治療は手術治療が原則で,遠隔転移を有する例では甲状腺を全摘後131Iを用いて内照射療法を行う.乳頭癌,濾胞癌などの分化癌では癌の進展範囲により甲状腺切除範囲を決定し,リンパ節の転移状況によってリンパ節郭清を行う.乳頭癌は濾胞癌に比べて頸部リンパ節転移を生じやすく,系統的なリンパ節郭清が必要で,たとえ小さな乳頭癌でも気管周囲のリンパ節郭清は最低限必要である.欧米では甲状腺分化癌と診断されれば甲状腺全摘術を行う施設もあるが,その有用性は証明されていない.また術後に甲状腺ホルモンを投与してTSH下げるTSH抑制療法の有用性も証明されていない.

キーワード
甲状腺乳頭癌, 甲状腺濾胞癌, 甲状腺全摘術, 頸部リンパ節郭清


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