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日外会誌. 106(4): 307-312, 2005


外科学会会員のための企画

内視鏡手術―是か非か?

胸腔鏡手術―是か非か?―呼吸器外科手術における胸腔鏡下手術の有用性―

虎の門病院呼吸器センター 外科

河野 匡 , 文 敏景

I.内容要旨
低侵襲手術に対する患者や内科医の要請から,呼吸器外科領域では胸腔鏡下手術が次第に多く行われるようになってきている.胸腔鏡下手術では術後疼痛,術後の呼吸機能,術後の血中のサイトカイン,術後のADLの状態,術後在院日数の観点から従来の標準開胸の手術と比較して低侵襲であると報告されている.当科でも術後の疼痛の軽減,在院日数の短縮,早期のADLの改善が見られた.開胸手術と比較して非常に良好な視野が得られ,従来は困難であった肺尖部付近,横隔膜付近,胸壁,血管と血管の間などを良好に視野に入れることができる.更に手術室内の全ての人が共通の術野を観察できる利点は大きい.特に手術の教育を行う場面では,トレーニーとトレーナーが共通の術野を観察しているので,トレーニーは手技のイメージを得やすいし,トレーナーは同じ視野で行われているので,安心して教えることができる.しかし,モニター画面を見て手術を行うには訓練が必要で,正しい教育を受けて練習してから手術に臨むべきである.手術適応も慎重な検討が必要で,技量にあわせて症例を選択して適応すべきである.今後は,一般外科で腹腔鏡下手術のトレーニングを受けた外科医が呼吸器外科領域を専攻して来ることが予想され,またCT検診の普及により早期肺癌の発見が増えてくることが予想されるので,患者や内科医からの要請と相まって胸腔鏡下手術を適応される場面が増えてくると考えられる.

キーワード
胸腔鏡下手術, VATS, 低侵襲性, 教育, 視野


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