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日外会誌. 106(4): 280-285, 2005
特集
進展様式に基づいた消化器癌手術のこつと工夫
3.リンパ区域郭清を伴う早期胃がんの機能温存縮小手術
I.内容要旨
近年開発されたsentinel nodes biopsy(SNB)により早期の胃がんのリンパ節転移は正確に診断されるようになった.しかし,術中微小転移検出法は確立されておらず,その臨床応用が逡巡されている.胃からのリンパ排出は5経路あるが,色素法によるリンパ系マッピングで描出される早期の胃がんのlymphatic basin(LB)は89%が1または2経路で,占拠部位による特異性が見られる.SNB陽性でD2以上をおこなった36例の転移リンパ節の分布は,15例がSNに限局し,20例はsentinel node(SN)に加えてLBとその下流のnon-SNに観察され,LB系以外のリンパ経路への波及は進行がんの1例で認めたにすぎなかった.すなわち,転移は,まずSNに生じ,ついでLB内のnon-SN,ここで蔓延してLB以外のリンパ経路に進展することが示された.一方,SNB陰性のリンパ節の連続切片あるいは分子生物学的な検索では,SNとLB内のnon-SNに微小転移が証明され,lymphatic basin dissection(LBD)が必要なことが示唆された.1995年より始めたSNB陰性へのLBDを伴う機能温存縮小手術158症例では,リンパ節再発を認めず,生存曲線も定型手術との間に差を認めなかった.また術後のQOLは,定型手術に比べ摂食量・体重回復が良好で,ダンピング症状・十二指腸胃逆流・胆石の発生が少なかった.
キーワード
胃癌, 手術, センチネルリンパ節, 郭清, QOL
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