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日外会誌. 106(3): 232-236, 2005
特集
術後静脈血栓症・肺動脈血栓塞栓症の予防と治療
3.消化器・一般外科領域における術後静脈血栓症とその予防
I.内容要旨
欧米では一般外科手術後に予防法を行わなかった場合,深部静脈血栓症(DVT)は19%に,肺塞栓症(PE)は1.6%に発生し,致死的PEの発生率は0.9%と報告されている.本邦では開腹術後のDVTの発生率は15.8%でPEの発生率は0.34%,致死的PEの発生率は0.08%であった.当科でのPE発症率は0.11%で,致死的PE発症率は0.03%であった.当科では1999年に間欠的空気圧迫法(intermittent pneumatic compression:IPC)を導入以降,段階的に予防法を改定し,弾性ストッキング,低用量未分画ヘパリン(low dose unfractionated heparin:LDUH)投与を導入してきた.それ以降PEの発症率は低下し致死的PEは経験していない.当科で経験したPE15症例を肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドラインでリスクを再評価すると,13例は高リスクと評価されたが2例は低リスクと評価された.またPE15例の平均年齢は54歳,平均BMIは24.8で,高齢者や肥満者に限定されるわけではなかった.これはPEのリスク評価が難しいことを示していると考えられた.現在当科では全手術症例にIPCと弾性ストッキング着用およびLDUH投与を行っている.これは上記ガイドラインの最高リスクに対する予防法に相当する.これまでLDUH投与による重大な副作用は経験していないが引き続き術後PE・DVTの予防効果と出血のリスクについて検討を重ねたいと考えている.
キーワード
深部静脈血栓症, 肺塞栓症, ヘパリン, 弾性ストッキング, 間欠的空気圧迫法
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