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日外会誌. 106(3): 227-231, 2005


特集

術後静脈血栓症・肺動脈血栓塞栓症の予防と治療

2.深部静脈血栓症の病態,診断と治療

鳥取大学 医学部器官制御外科学講座器官再生外科学分野

應儀 成二 , 金岡 保 , 伊藤 則正 , 鈴木 喜雅 , 谷口 雄司

I.内容要旨
術後深部静脈血栓症は,発生頻度の高い骨盤下肢静脈系において,多くはヒラメ静脈に発生する.ヒラメ静脈血栓症は,大部分は1カ月以内に消失するが,一部が中枢進展して,症候性となる.塞栓化には,塞栓源となる中枢端の部位における血栓性状や下肢運動が関係して,多くは1週間以内に発生する.
診断は,問診・診察による疑似診断,定量検査による選別診断,画像検査による確定診断の順とする.緊急時には,選別診断を省略する.肺塞栓症の塞栓源を検索するには,無侵襲的で利便性の高い静脈エコーが有用であり,ヒラメ静脈血栓症の確認が要点である.
治療は,血栓範囲と発生時期を考慮して,選択する.圧迫療法は,静脈還流障害の軽減と再発予防のため,全て適応とする.抗凝固療法では,出血の禁忌でない限り,全て適応であり,3カ月以上は継続する.血管内治療では,カテーテルによる血栓内溶解療法が有望であり,下大静脈フィルターやステントを併用して,より効果的な方法を開発する.
術後肺塞栓症の対策として,予防法を実践することは重要である.しかし,術後深部静脈血栓症を回避することは困難であり,術後における早期診断,早期治療が重要となる.深部静脈血栓症と肺塞栓症は,異なる疾患であるが,静脈血栓塞栓症として同時に対処できる診療体制の確立が急務である.

キーワード
深部静脈血栓症, ヒラメ静脈血栓症, 肺動脈血栓塞栓症, 静脈エコー, 塞栓源検索法


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