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日外会誌. 106(1): 13-17, 2005


特集

外科領域における輸血と血液製剤の現状と展望

4.同種血輸血(血小板輸血を含む)

神奈川県赤十字血液センター 

稲葉 頌一

I.内容要旨
外科における輸血療法は本質的に,手術時の出血に対する補充療法である.しかし,出血速度のほうが速いので,経静脈ルートでしか補正できない輸血療法はリアルタイムの等量補正は難しい.注入速度の速い輸液療法で循環血液量の補正を行いながら,少し遅れてヘモグロビン(Hb)値の補正が行われる.Hb値の補正は酸素運搬能が生命維持に必要最低限の12ml/kg/minというレベルを考慮して行う.酸素運搬能は個人の心拍出力の差によって規程され,Hb補充レベルは健常者では7g/dl,心機能異常者で10g/dlとされる.術中輸血をするしないの決定は麻酔科医に委ねられており,患者の年齢・疾患などの条件が考慮される.患者生命予後が重要な判断材料となる.若年の良性疾患での輸血は極力避ける努力がなされるし,高齢者や悪性疾患では術後の負担を軽減する意味から積極的に輸血がなされる.新鮮凍結血漿は凝固系の補充液としてのみ使用される.従来のように血漿増量剤や蛋白補給としての使用は認められなくなった.このため,循環血液量を超えるほどの大量出血時の希釈性凝固障害が主な適応となる.PT値を指標に必要量を補正する.また血小板は末梢血血小板数が50,000/mm3以下の止血困難例に使用する.少数例であるが,進行癌の悪液質,脱水状態,高度胸・腹水のある肝不全,腎不全などでは,術前に輸血を行って貧血,凝固系の補正を行う場合がある.

キーワード
赤血球, 新鮮凍結血漿, 血小板, 血管内残存率, 酸素消費量

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