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日外会誌. 105(12): 757-762, 2004


特集

外科医に必要な炎症性肺疾患の知識

7.周術期の肺障害
-肺切除術後の特発性肺線維症急性増悪及び急性間質性肺炎について-

東北大学加齢医学研究所 呼吸器再建研究分野
東北大学病院 呼吸器外科

星川 康 , 近藤 丘

I.内容要旨
肺癌肺切除術後の手術関連死亡率は1~3%とされているが,その約3割を特発性間質性肺炎(IIP),特に,特発性肺線維症(IPF)の急性増悪や急性間質性肺炎(AIP)が占める. IPF症例の約20%に肺癌が合併し,反対に肺癌症例の約2~4%にIPFが合併する. IPF合併肺癌に対する肺切術後急性期に約20%が急性増悪をきたす.多数の肺癌肺切除例の検討の結果,術前の画像上はIPFと診断がつかない約10~17%の症例に限局性の線維化病変(usual interstitial pneumonia[UIP]パターン,IPFの病理像)を認めることが明らかにされた.限局性の線維化病変を有する症例のうち約20%が術後急性増悪をきたす.一方,線維化病変のない症例では約0.5%がAIPを発症する.術後IPFの急性増悪あるいはAIPをきたした症例にはステロイドパルス療法が施行されるが,在院死率は50%を越える.発症後早期にステロイドパルス療法が施行された症例では救命率が高い可能性もあり,急性増悪を疑わせる徴候を見逃さないこと,さらに,術前の画像上限局性線維化病変を有する症例での切除肺非腫瘍部の病理組織診によるUIPの確認が重要と考えている.発症後の予後が極めて不良なため効果的な予防法が求められているが,いまだ確定的なものはない.今後益々の基礎及び臨床研究が必要な分野である.

キーワード
肺癌肺切除術, 特発性肺線維症, 限局性ーusual interstitial pneumonia (UIP), 急性憎悪, 急性間質性肺炎

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