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日外会誌. 105(12): 745-750, 2004


特集

外科医に必要な炎症性肺疾患の知識

5.肺結核症

結核予防会複十字病院 呼吸器外科

中島 由槻

I.内容要旨
肺結核症に対する,結核の治療を目的とした外科療法の適応は極めて限定的で,主たる対象は難治性・多剤耐性肺結核症である.その術式は肺切除術が大部分を占め,その他に胸郭成形術,空洞切開術なども施行される.結核予防会複十字病院における多剤耐性肺結核症83例に対する91回の肺切除術では,上葉中心の肺葉切除が55%を占め,また約30%は肺全切除術であった.術前背景因子として,男性が78%であり,我が国全体の結核患者よりやや年齢が若く,平均耐性薬剤数5.4剤,64%で術前喀痰結核菌陽性であった.術後合併症では難治性気痩が19%,膿胸が9%,急性呼吸不全が5.5%に認められ,特に5例の術後結核性膿胸は全例開窓せざる得なかったが,手術死亡は認めていない.治療成績は排菌停止率98%,再排菌率12%,再排菌後の追加治療による排菌停止例を加えた最終的排菌停止成功率92%であった.肺切除後の再排菌因子としては,耐性薬剤数6剤以上,糖尿病合併,残存肺空洞遺残,術直後に排菌あり,空洞内菌陽性などの因子が有意に関与していた.対象は肺硬化空洞性病巣で,切除すべき病巣が限局し,有効薬剤が多く残っておりかつ心肺機能上耐術であれば,肺切除術の良い適応である.

キーワード
Pulmonary tuberculosis, Multidrug-resistant tuberculosis, Surgical treatment, Pulmonary resection

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