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日外会誌. 105(11): 709-715, 2004


特集

周術期の院内感染対策

5.抗菌薬の適正使用:米国と日本の考え方の違い

広島大学大学院 病態制御医科学講座外科

竹末 芳生 , 大毛 宏喜 , 末田 泰二郎

I.内容要旨
予防抗菌薬を有効に使用するために,3つの原則が守られなければならない.1)術中汚染菌にのみ活性を有する予防抗菌薬を使用する.2)初回抗菌薬は皮切前30分以内に投与する.3)予防抗菌薬は短期間投与が勧められ,抗菌薬の有効血中濃度を術後数時間維持すればよい.これらの原則は欧米では標準化されているが,日本ではいくつかの点でこれらの勧告に関しコンセンサスがえられていない.日本では拡大リンパ節郭清や侵襲度の大きい手術が行われているとの理由で,抗菌薬投与期間は術後3-4日間が推奨されている.しかしこの期間でも耐性菌が選択されることが報告されており,日本でRandomized clinical trialを実施し,それを根拠とした抗菌薬使用のガイドラインを作成することが望まれる.
術後感染治療ではグラム染色を利用した抗菌薬の選択が必要である.時間依存性の殺菌作用を示すβ-ラクタム剤は,1日3-4回分割投与を行う.一方濃度依存性の殺菌作用を示すアミノ配糖体は時間の因子より最高血中濃度(またはarea under the curve,AUC)が重要であり,1日量単回投与が勧められている.心配される副作用も分割投与より軽減する.また注射用新キノロン薬も濃度依存性であり1日2回投与が推奨される.このような薬物力学・薬物動態からみた適切な治療抗菌薬使用法も今後取り入れていく必要がある.

キーワード
予防抗菌薬, 術後感染, ガイドライン, 薬物力学・薬物動態, エムピリックセラピー


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