[書誌情報] [全文PDF] (822KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 105(11): 696-701, 2004


特集

周術期の院内感染対策

2.宿主対策

帝京大学 外科

福島 亮治 , 稲葉 毅 , 飯沼 久恵 , 冲永 功太

I.内容要旨
周術期院内感染対策の宿主対策として,①MRSA保菌対策,②血糖管理,③栄養管理(特にimmunonutrition)は,すぐに実践可能かつ有効な方策と考えられる.①:予定手術全例の鼻腔にムピロシン軟膏を使用してS. aureusを除菌しても,術後感染防止に有効ではない.しかし除菌は,鼻腔の保菌者に対して,S. aureusの院内感染(nosocomial infection)を有意に減少させるというエビデンスがあり,鼻腔MRSA陽性のHigh risk症例では,除菌が院内感染対策として有効と考えられる.耐性化を招かぬよう適切な症例を選択し,かつ短期間の投与を心がけるべきである.②:従来行われていたよりも厳密な術後の血糖管理が術後感染を減少させるとの報告が認められ,特に術後早期の血糖値を高くしないことが重要であるとされる.さらに重症sepsis患者では,血糖を80-110mg/dlにコントロールした群で180-220mg/dlにした群よりも生存率が良好である.③:アルギニン,グルタミン,ω-3系脂肪酸核酸などの生体防御を高めるとされる栄養素を豊富に含む経腸栄養剤(immune-enhancing enteral diet)を用いた栄養管理はimmunonutritionと呼ばれ,このような製剤が2002年から日本でも市販されるようになった.immunonutritionが手術患者の術後感染性合併症を約50%減少させることが欧米の多くの無作為比較試験で示されている.宿主サイドからみた有望な周術期感染対策と考えられる.

キーワード
MRSA, ムピロシン, 血糖管理, 糖尿病, immunonutrition, Immune-enhancing enteral diet


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。