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日外会誌. 105(10): 658-663, 2004


特集

肝切除・部分肝移植後の肝再生と肝不全-基礎と臨床-

4.肝切除肝不全のメカニズム

横浜市立大学大学院 消化器病態外科学

渡会 伸治 , 窪田 徹 , 松尾 憲一 , 清水 哲也 , 籾山 信義 , 武田 和永 , 田中 邦哉 , 遠藤 格 , 関戸 仁 , 嶋田 紘

I.内容要旨
肝切除後の肝障害には急激な門脈圧上昇や阻血再還流障害などの物理的要因や感染症要因など多くの誘因が存在するが,肝不全に至る細胞レベルのメカニズムとして肝細胞のアポトーシスが最も重要である.アポトーシスに至る機序はその原因により異なる.大量肝切除では高サイトカイン血症や高エンドトキシン血症により酸化窒素やスーパーオキサイドが大量に産生され,これらによって肝細胞が直接障害を受けアポトーシスに陥る.虚血再灌流障害では細胞内カルシウム濃度の上昇が契機となり,MMPTやCalpainの系の活性化により肝細胞がアポトーシスに陥る.持続感染例では,エンドトキシンによりKupffer細胞や伊東細胞から産生されるTGF-β1による肝再生抑制と,肝細胞のapoptosis,および肝微小循環障害によるnecrosisが惹起する肝細胞障害が原因と考えられた.対策はこれらの機序を十分理解したうえで,個々の症例に応じて対処するべきである.

キーワード
肝切除術, 肝不全, 肝再生, アポトーシス


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