[書誌情報] [全文PDF] (1623KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 105(10): 654-657, 2004


特集

肝切除・部分肝移植後の肝再生と肝不全-基礎と臨床-

3.肝切除後肝再生の臨床像

信州大学 医学部外科

三輪 史郎 , 宮川 眞一

I.内容要旨
ヒトや動物の肝臓は強い再生能力を持っており,肝切除後の肝細胞は急速に増殖し停止する.この現象は以前から知られていたが,その機構は十分に明らかにされていない.近年CTで正確な肝容積の測定をすることで,さまざまな疾患での肝切除後肝再生を肝容積で評価することが可能になった.正常肝では肝切除後2~3カ月にはもとの大きさに回復するが,肝炎,肝硬変ではその程度により完全に回復できない.また切除量が大きくなるほど再生速度が速くなることも明らかになった.肝門部胆管癌に対する肝葉切除後の肝再生は術前肝容積の7~8割の肝容積に集束することが明らかになったが,その機構については十分解明されていない.しかし,再生した肝臓の最終的な容積は体表面積と強く相関しており,肝切除後の肝再生は個々の体の大きさに合った肝容積への回復の過程であると考えられる.我々は患者の体格が代謝量,ひいては肝臓の大きさに関係しているという観点から,患者の体表面積から求めた標準肝容積という概念を提唱しているが,移植された肝臓は,最初標準肝容積に比べ,小さいグラフトも大きいグラフトも,最終的には標準肝容積に集束することを示し,また肝硬変症例は非肝硬変症例よりも移植肝が急速に増大する傾向がみられ,興味深い.肝切除後の肝再生は大量肝切除や生体肝移植ドナーにおいては術後安全性の確保という点で極めて重要であり,肝機能と肝切除容積を考慮し,慎重に術式を選択しなくてはならない

キーワード
肝切除, 肝再生, 肝容積, 生体肝移植

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。