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日外会誌. 105(9): 480-484, 2004


特集

癌治療における最近のトピックス

3.センチネルリンパ節生検の現状と展望

慶應義塾大学 医学部外科学教室
*) 慶應義塾大学 医学部放射線学教室

池田 正 , 神野 浩光 , 藤井 博史*) , 北島 政樹

I.内容要旨
乳癌に対するセンチネルリンパ節生検の概念とは,癌からのリンパ流を最初に受けるリンパ節のみを生検し,ここに転移がなければ他のリンパ節に転移している確率は非常に低いため,腋窩リンパ節郭清を省略することが可能であるとするものである.この手技を用いることにより不要な郭清による上腕浮腫や挙上障害などの後遺症を避けることができる.手技には種々の方法があるが,どのような手技を用いても一定の成績を上げることは可能である.それよりも慣れが重要であり,実際に臨床応用する前に数十例は試して手技に習熟する必要がある.わが国における現状は,今年乳癌学会が施行したアンケートによると,約40%の施設がセンチネルリンパ節生検を施行しており,年間症例数の多い施設ほどこのテクニックを導入している.また,症例数が多いほど色素法の占める割合が少なくなり,併用法の割合が多くなっていた.センチネルノードナビゲーションサージェリー研究会が2002年に40施設を対象に行ったアンケートでは,施設としてもlearning curveの存在が伺われた.今後センチネルリンパ節生検はますます使用されるようになると考えられるが,微小転移の問題や,術前化学療法後でも応用できるかなどの問題が提起されている.有用な概念ではあるが,アイソトープ使用の煩雑さがあり,この問題点を回避するために磁性体でのセンチネルリンパ節検出の試み,造影CTによるセンチネルリンパ節描出の試みなどがなされている.

キーワード
乳癌, 手術, センチネルリンパ節


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